矯正治療のリスク副作用

矯正治療をご検討中の方へ

矯正治療を受けることでどのようなリスクが起こりうるのか、これから受診を考えている患者様は当然ご心配されると思います。ここでは歯科矯正治療のリスクをご説明するとともに、リスクを最小限に抑えるための注意点をお伝えします。

無理や無駄のない
治療計画が重要です

動的治療に「無駄な動き」や「無駄な期間」があると歯根吸収や歯肉退縮などのリスクが高まります。そのため、事前に無理・無駄のない治療計画をしっかりと立ててから治療を開始することが重要になります。

「非抜歯で治療してみてから、ダメなら抜歯で・・」「まず動かしてみて、様子をみて・・」などの見通しで治療を進めた場合、歯の移動にかける時間が増えるため、リスクが大きくなることが予想されます。
私は矯正のプロとして、治療のゴール、つまり、どのような仕上がりになるかを患者様に明確にお伝えし、よりふさわしい治療方法をアドバイスすることが重要であると考え、リスクを最小限に抑えた、無理・無駄のない治療計画のご提案を心がけています。

歯根吸収について

歯根吸収とは、文字通り歯の根が吸収されて短くなってしまうことです。歯科矯正の治療を受けるリスクとしてしばしば「歯根吸収」が挙げられますが、矯正治療によって起こる歯根吸収はごくわずかで、歯がグラグラするほど重症になることはありません。しかし、動的治療の際に「無駄な動き」や「無駄な期間」があると歯根吸収のリスクが高まります。

歯根吸収について

歯根吸収のメカニズム

歯科矯正治療で歯根吸収がおこるメカニズムとして、以下のようなケースが考えられます。

1矯正力が強すぎる

矯正治療では持続的な力を歯から組織に伝え、ある種の新陳代謝を利用して歯を移動させてゆきます。この力が強すぎても弱すぎても、適切に移動しません。そして矯正力が許容範囲を超えて強すぎる場合、歯根吸収の原因になります。

2ジグリングによる歯根吸収(ジグリング-ごますり運動)

矯正治療の際には、ジグリング(ゆさぶり、ごますり運動)を行いながら歯を移動させています。歯根吸収は、このジグリングの期間が長いときに促進するといわれ、動的治療に「無駄な動き」や「無駄な期間」があると歯根吸収のリスクが高まります。

歯根吸収 ジグリング

矯正治療を専門に行う歯科医師は、こうしたリスクを最小限にするため、力のかけ方や向きを考え、無駄な動きが無いよう治療を進めます。

歯肉退縮について

歯肉退縮とは、歯茎が下がり(退縮)、歯根が露出するようになった状態のことを言います。
歯の根本(歯根)の表面が露出することで知覚過敏や、虫歯・歯周病リスクが増大する可能性があります。ブラッシングが強すぎたり、歯周炎や外科的治療による原因で起こることもあります。

歯肉退縮について

矯正治療における歯肉退縮

歯科矯正治療で歯肉退縮がおこるのは以下のようなケースが考えられます。

1矯正力が強すぎる

矯正治療における歯肉退縮は、歯に無理な力をかけることで歯槽骨の吸収を引き起こし、歯茎が下がってしまう場合が考えられます。

2過剰な拡大による歯根の露出

歯を抜かずに、拡大装置などで顎を広げる治療を行った際、骨の許容範囲を超えて過剰に広げてしまい、歯根が露出してしまうことがあります。拡大装置による矯正治療は歯肉退縮が生じやすいため治療計画時から注意が必要です。

矯正治療を専門に行う歯科医師は、力のかけ方や向きを考え、無駄な動きが無いよう治療を進めます。

むし歯・歯周病のリスクについて

矯正治療のリスクのひとつとして、装置を装着することでブラッシングしにくくなり、ケアが不十分で虫歯や歯周病のリスクが高まるということがあります。しかし、矯正治療中であっても虫歯や歯周病は予防できます。
当院では、矯正治療中の虫歯予防・歯周病予防を担当の歯科衛生士が行っていますのでご安心ください。

当院の予防ケアについて、詳しくはこちらからご覧いただけます→むし歯・歯周病予防

顎関節症について

大人になってから矯正治療をすると顎関節症になる、というのもよく挙げられるリスクです。永久歯が生えそろったばかりのお子様はともかくとして、20代以上の成人の方は、歯並びが悪くても悪いなりにかみ合わせが確立していますので、矯正治療で歯並びを変えることで顎関節症のリスクが高くなると考えられるのも無理はないと思います。しかし、矯正治療はただ単に歯並びを変えるだけの治療ではありません。経験を積んだ矯正歯科医であれば、かみ合わせも考慮した治療計画を立てますので、逆にあごの痛みが改善されたというケースもあるくらいです。
矯正歯科医の見極めが重要になりますが、矯正治療をしたから顎関節症になるわけではありません。

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について

ここまでリスクと注意点を掲載してきましたが、2018年に改正された厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、自費診療に係るリスクや副作用をくわしく情報提供することが求められています。
どのような治療を受ける時でもリスクのない医療はありません。矯正治療には以下の一般的なリスク・副作用があることをご理解ください。
※すべてのリスクや副作用が生じるわけではありません。

当院では、矯正治療による様々なメリットとリスクの両方を考慮した上で、可能な限りリスクを抑えながら治療を進めるよう心がけております。

  1. 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間1~2週間で慣れることが多いです。
  2. 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
  3. 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
  4. ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
  5. ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
  6. 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
  7. 様々な問題により、当初予定した治療計画をやむをえず変更する可能性があります。
  8. 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
  9. 矯正装置を誤飲する可能性があります。
  10. 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
  11. 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
  12. 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
  13. あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
  14. 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
  15. 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
治療内容 スタンダードエッジワイズ法を用いた矯正歯科治療
費用(自費診療) 約88万円~110万円(税込)
通院回数/治療期間 通院回数 24回 / 治療期間 約2年
副作用・リスク 装置を初めて装着した時とワイヤーの調節を行った直後に数日間痛みを感じる場合があります。
歯に矯正装置を装着するため、歯磨きをしづらくなって磨き残しが多くなり、虫歯や歯周病にかかりやすくなることがあります。
歯を動かすことにより、歯根吸収や歯肉退縮が起こる場合があります。
歯並びを整え、きちんと噛めるかみ合わせと調和の取れた口元を作るために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。
保定のためのリテーナーを適切に使用しないと後戻りする場合があります。

※矯正歯科治療は公的健康保険の対象外の自由(自費)診療となります。